“Broken Heart Syndrome”
その名前を、
あなたはどんな病気だと思いますか?
私はどこか、
比喩のように受け取っていた。
でもある日、
その言葉は、
比喩じゃなくなった。
友人の葬式で起きた胸痛
友人の葬式で、
突然の胸痛。
55歳女性。
心電図変化あり。
私はその患者さんを直接受け持っていたわけではなく、
別の対応をしながら、
「カテに行く人がいるなぁ」
くらいに思っていた。
後から聞いた。
「タコツボだったよ」
本当の意味では理解していなかった、タコツボ心筋症
その時の私は、
正直、タコツボ心筋症を本当の意味では理解できていなかった。
だから最初は、
「そうなんだ」
くらいだったと思う。
でも、
あとから病態を調べていく中で、
私は静かに衝撃を受けた。
それまでの私は、
タコツボ心筋症の「ストレス」を、
どちらかというと、
重症感染や身体侵襲など、
病態的なストレスとして捉えていた。
タコツボ心筋症の特徴
- 閉経後女性に多い
- 強い精神的ストレスや身体的ストレスをきっかけに発症することがある
- 胸痛やST変化など、急性心筋梗塞に似た症状を示す
- 「Broken Heart Syndrome」と呼ばれることもある
そんな特徴を持つ病気だった。
“Broken Heart Syndrome”
聞いたことはあった。
でも私は、
どこか比喩のように受け取っていた。
けど違った。
友人の葬式で起きた胸痛。
その出来事そのものが、
タコツボ心筋症の象徴的な背景だった。
タコツボ心筋症は、
強い感情の揺れが、
本当に心筋の動きにまで影響を与える病気だった。
まさに“Broken Heart”だったのだと、
私はあとから理解した。
感情は、心臓と切り離されていなかった
心と身体が繋がっていることなんて、
本当は誰もが知っている。
それでも私は、
普段、機能や数値として見ている“心臓”もまた、
人の感情と切り離されて存在しているわけではないのだと、
改めて考えさせられた。
タコツボ心筋症は、
その事実を、
心電図や心機能の変化として突きつけてくる。
- 変化する心電図の波形(ST変化)
- ポンプ機能の低下(EF低下)
- 不整脈の引き金になりうる脈の遅れ(QT延長)
- 時には心不全
感情の揺れが、
これだけの変化を身体に刻む。
そのことを、この病気は教えてくれた。
モニターには映らないもの
忙しい現場では、
私たちは、
ミスやリスクを見逃さないこと、
処置や業務を正確に進めることへ、
自然と視点が向いていく。
もちろんそれは、
命を守るために欠かせないこと。
でもタコツボ心筋症は、
人の感情が、
本当に心筋の動きにまで影響を与えることがある
そう考えると、
私たちが患者さんへ向ける声や表情、
その場の空気感もまた、
私たちが思っている以上に、
身体へ影響を与えている。
それは、
数値として見えることもなく、
特別な技術として評価されることもない。
けれど私たちはきっと、
日々そんな看護も同時に行っている。
あなたの”Broken Heart”
“Broken Heart Syndrome”
感情が、
本当に身体へ影響を与えることがあるのだと、
循環器疾患として突きつけてくれた。
誰かの感情を受け取りながら働く私たちもまた、
その外側にいるわけではない。
私たち自身の”Broken Heart”も、
置き去りにせず働いていけたらと思う。

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